「古さ」を残しつつ生かす
築80年の町屋リノベーション
祖父母が80年前に建てた家を、3世代目が住み継ぐことに。その建物の歴史のみならず、中世から海運で栄えた古い町とも調和するよう、「古さ」を残しつつ、若い世帯が快適に過ごすためのリノベーション。
網干の家
住宅リフォーム | 木造2階建 | 網干市
これまでの問題点と施主の希望
- 無断熱なので寒く、広い場所は使わず、狭い6畳で暮らしている。
- 家の中が段差だらけ。台所に行くにも段差。
- 階段が急で、2階には長らく上っていない。物入になっている。
- 家の北西の土台や建物が下がっている。地震が心配。
- 鴨居や建具の内法が1.7mと低く、1.85mと長身の施主が頭をぶつけてしまう。
- 1階の座敷も使わず、物入のまま。
- 応接室の西側がいつも湿気ていて、応接室の壁に植物が生えている。
- 日本画家の夫人のアトリエや作品収納スペースが(子供が小さいので台所の近くに)欲しい。
- お風呂は、改装したばかりなのでそのまま使いたい。
- 古い家の建具など、できるだけ使って生かしたい。
といった点がありました。
解決策
- 通りに面した蔵、松の木、銅張の外壁など、街並みに重要な景観要素なので、塗りなおし程度でそのまま保存した。
- 蔵は、将来的にギャラリーとして使えるように、床を外し、道に面して出入口をつけた。
- 玄関土間を大きく確保し、北をパブリック動線、南をサービス動線にわけて、表は大勢の来客時にもきれいに保ちつつ、収納量の多い家事動線を確保している。
- 土間に面した窓は既存のまま、細格子。下に収納を新設。
- 小上がり中央の4枚の白いふすまは、将来襖絵を書いてもらうために。
- 2つの座敷と縁側をワンルームにし、床は足触りの良い無垢の杉板張りに。
- 屋根と外壁、浴室を残し、家全体の中をすべて撤去し、断熱材を入れた。べた基礎をうって湿気対策をし、下がった部分をジャッキアップ。
- 傷んだ柱は根継ぎし、鴨居の高さを20センチ上げて1.9メートルにした。
- バランスよく構造壁を配置。特にリビングや食堂周りは剛格子にして、耐震性能を確保しながら視線を遮らず、和風のインテリアにも馴染むように。
- 急だった階段は、緩やかなL字に付け替えた。階段下に古い建具を転用した収納庫。
- 木工作家によるオリジナルキッチンは、家の中心にあり、リビングダイニング越しに庭も眺められる。壁には施主のこだわりのかわいいタイルが張られた。
- 2階の床もすべて無垢の杉板張りに。座敷をそのまま寝室に。赤い壁紙は、施主のセレクト。
- 1階同様、鴨居の高さを上げて、剛格子で補強し、寝室として閉じられるように、明かり障子を入れた。
- 天井はそのまま。縁側の格子組の美し硝子戸や雨戸、美しい木製の手すりも既存のまま。
- 子供室は、それぞれクロゼットを作り付けた。
- 2階のトイレは改修し、洗面はそのまま使えるように。
- 庭のデッキや植木などは、施主が少しずつ整えていく予定。
- 座敷にあった床の間や書院は美しい細工で、そのまま保存した。
などをご提案しました。
網干の美しい街並みを保存しつつ、快適に生活できることを示すことによって、少しでも風景を残すことに寄与できればと願います。